「治験=よくわからない薬を試す」ではありません

治験に対してハードルを感じる一番の理由は、「まだ安全かどうかわからない薬を、いきなり人で試すのではないか」という不安ではないでしょうか。

はじめての方が感じやすい「治験」へのイメージ

  • 「実験台にされるようなイメージがあって怖い」
  • 「どんな成分かわからないお薬を飲むのは不安」
  • 「入院したり、厳しい生活制限があったりしそう」

実は、私たちが普段病院で処方してもらうお薬の多くも、過去に多くの方のご協力を得た治験を経て、国に承認されたお薬です。
治験に進むお薬は、そこにたどり着くまでに何年もの歳月をかけて基礎研究や安全性の確認を重ねた「選ばれた候補」だけに限られています。

さらに婦人科で行われる治験は、ゼロから作られた未知のお薬だけを対象にしているわけではありません。
たとえば、次のようなお薬を日本の患者さんにも届けられるようにするための治験がたくさんあります。

  • 海外ではすでに多くの女性に使われているお薬を、日本でも承認して使えるようにするための治験
  • すでに日本で別のお悩みに使われているお薬を、月経困難症(生理痛)やPMS、子宮内膜症、更年期症状などにも使えるようにするための治験
  • 今あるお薬の飲みやすさや副作用の少なさの改善を目指して開発されたお薬を、これまでのお薬と比べる治験

このように治験は、「お薬の候補が人に対して本当に効くのか、安全に使えるのかを確かめ、国の承認申請につなげるための臨床試験」です。目的や段階は治験ごとに異なり、最終的に承認するかどうかは、この結果をもとに厚生労働大臣が判断します。

明るい診察室で女性医師から治験について穏やかに説明を受ける女性のイラスト

婦人科の治験は、普段の生活を続けながら参加できます

「治験というと、何日も入院しないといけないの?」と思われることもありますが、婦人科クリニックで行われる治験のほとんどは、お仕事や学校、家事など普段どおりの生活を送りながら、月に1回程度通院していただくスタイル(外来治験)です。

通院のスケジュールや検査の内容は治験ごとに決められており、参加をご検討いただく段階で事前にお伝えします。参加される方には、次のようなメリットがあります。

  • いつも以上に丁寧な検査・診察が受けられる:定期的な血液検査やエコー検査などを通じて、ご自身の体の状態を細かく確認します。
  • 新しい治療の選択肢にふれられる:これまでの治療法やお薬が合わなかった方にとって、新しい選択肢に出会えるきっかけになることがあります。
  • 通院や検査にかかる費用のサポートがある:治験に関わる検査代やお薬代の一部がサポートされるほか、通院に伴う交通費などの負担を軽減するための「負担軽減費(協力費)」が支払われます(※内容は治験ごとに異なります)。
  • 同じ悩みを持つ次の世代の女性たちの力になれる:あなたの参加が、将来、生理痛や婦人科疾患で悩む多くの女性を救うお薬の誕生につながります。

なお、治験は試験段階の取り組みであり、研究を伴います。治験で使用されるお薬の有効性・安全性は、まだ検証されたものではありません。

「まずは話を聞くだけ」でも大丈夫。治験の4ステップ

治験のご案内を受けたからといって、その場で参加を決める必要はありません。まずはどんな内容なのかを知るところから、ゆっくり始まります。

  1. STEP 01

    詳しい説明を聞く(インフォームド・コンセント)

    医師やスタッフから、治験の目的やスケジュール、予想される効果・副作用についてわかりやすくご説明します。わからないことは何でも質問でき、説明文書をご自宅に持ち帰ってご家族とゆっくり相談してから決めることもできます。

  2. STEP 02

    お体の状態を確認する(事前検査)

    「参加してみようかな」と思われたら、同意書にご署名いただいたうえで、血液検査や超音波検査などを行います。お体の安全を最優先にするため、基準に合わない場合はこの段階で参加見送りとなることもあります。なお事前検査は、治験の基準に合うかどうかを確認するためのもので、健康診断とは目的も検査項目も異なります。

  3. STEP 03

    お薬の使用と、定期的な通院・体調記録

    普段の生活を送りながら、決められた方法でお薬を使用します。スマートフォンのアプリや簡単な日誌に「今日の体調や出血の有無」などを記録し、定期的な通院日に医師やスタッフと一緒に経過を確認します。

  4. STEP 04

    治験終了・その後の診療へフォロー

    予定の期間が終わったら、最終の健康チェックを行って治験は終了です。終了後も、お悩みの症状に合わせて通常の保険診療などの治療へスムーズに引き継ぎ、責任をもってサポートします。

手帳と治験薬、ハーブティーを並べて日々の体調記録と通院スケジュールを確認するイラスト

はじめての方が安心できる「3つの約束」とよくあるご質問

すべての治験は、国が定めた厳しいルール「GCP(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)」に基づいて行われます。参加される方の不安を少しでも減らせるよう、次の3つの約束が守られています。

  • 参加するかどうかは100%自由。途中でもいつでもやめられます

    「一度はいと言ったら、最後まで続けなければいけない」ということは決してありません。説明を聞いたあとに断ることも、治験が始まったあとに「やっぱり不安になった」「仕事が忙しくなった」という理由で途中でやめることも、いつでも自由です。断ったからといって気まずくなったり、その後の診察で不利益を受けたりすることは一切ありません。なお、治験は参加される方のご希望以外の理由で終了することもあります。たとえば、新しい安全性の情報が出た場合、お体の状態が治験の基準に合わなくなった場合、治験そのものが中止になった場合です。その際は理由をお伝えし、その後の治療を責任をもってご案内します。

  • 事前の審査と、プライバシーの保護

    治験は、医療の専門家以外の方や、クリニックと利害関係のない方を含む5名以上の委員で構成される治験審査委員会(IRB)が、倫理的・科学的に妥当かどうかを事前に審査し、認められたものだけが行われます。また、治験で得られたデータは、お名前ではなく記号で管理されます。

  • 期間中の体調変化にも、医師が迅速・丁寧に対応します

    治験の期間中は、治験の計画に沿って定期的にお体の状態を確認します。もし期間中に少しでも体調の変化や気になる症状があれば、すぐに医師の診察と適切な処置・フォローが受けられる体制が整っています。

クリニックのスタッフと笑顔で相談する女性のイラスト

「プラセボ(偽薬)」に当たったら、治療にならないのではと心配です。

お薬の効果を正しく比べるために、有効成分の入っていない「プラセボ」が使われる治験もあります。ただしその場合も、医師やスタッフが通常以上に細かくお体の状態をフォローし、もし症状がつらい場合やご希望がある場合は、いつでも治験を中止して通常の治療へ切り替えることができます。

どのような方が治験に参加できるのですか?

治験は実施される時期によって、対象となる症状や年齢などの条件が異なります。参加できるかどうかは、治験ごとに定められた基準をもとに医師が判断します。

治験は、特別な誰かだけのものではなく、「今の症状をより良くしたい」「未来の女性たちの医療に少し協力してみたい」というお気持ちと、医療スタッフのサポートが一緒になって進める取り組みです。
このコラムが、治験に対する「なんとなく怖い・難しそう」というイメージをやわらげ、ひとつの選択肢として知っていただくきっかけになれば嬉しく思います。